胃カメラとピロリ菌について
「胃カメラは年に一度は受けるようにしてください」
病院に行くと、医師からこのような言葉を聞くことがあるかもしれません。なぜ、年に一度は胃カメラを受けたほうがいいのでしょうか?
それは、ピロリ菌感染と密接に関係しています。
ピロリ菌について
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ、Helicobacter pylori)とは、主に胃の粘膜に感染する細菌のことです。ピロリ菌は、胃の中の強い酸性環境に耐える能力を持っており、感染すると胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんのリスクを高めることが知られています。日本ではピロリ菌感染者が多く、特に高齢者層で感染率が高いです。主に幼少期に感染すると考えられており、感染経路としては、汚染された水や食べ物、あるいは家族内での接触が主なものです。大人になってからの新たな感染は比較的少ないとされています。
ピロリ菌が引き起こす病気
ピロリ菌に感染していても、ほとんどの人が無症状です。しかし、感染が長期化すると胃に影響を与え、以下のような病気を引き起こすことがあります。慢性萎縮性胃炎:ピロリ菌は胃の粘膜に炎症を引き起こします。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍:ピロリ菌によって胃や十二指腸の粘膜が損傷し、潰瘍が形成されることがあります。潰瘍は腹痛や出血を伴うことがあり、治療が必要です。
胃がん:ピロリ菌感染は、胃がんのリスクを高めることが確認されています。特に日本では、胃がんとピロリ菌の関連性が強く指摘されています。(以上の疾患の詳細は、胃・食道疾患をご参照ください)
胃がんリスクとの関連
上述のように、ピロリ菌感染は長期的に胃粘膜にダメージを与え、慢性萎縮性胃炎を引き起こし、これが進行すると胃がんのリスクが増加します。したがって、ピロリ菌感染がある場合は、早期に除菌治療を行うことで、胃がんの発症リスクを大幅に低減できると考えられています。早期に診断して除菌治療を行うことが肝要と言えます。
ピロリ菌の除菌
除菌治療は、ピロリ菌を体内から完全に除去することを目的としています。抗生物質とプロトンポンプ阻害薬(胃酸を抑える薬)を組み合わせた3剤併用療法が標準的な治療法です。除菌成功率は80〜90%とされていますが、1回の治療で除菌に失敗した場合は、別の抗生物質を使用した2回目の治療が行われることがあります。
当院では、胃カメラを受けていただいた日にピロリ菌感染の有無を確認し、もし感染が確認されたら、その日から除菌が可能です。もしまだピロリ菌がいるかどうか調べたことのない患者様がいらっしゃったら、お気軽にご相談ください。また、ピロリ菌感染による胃粘膜の萎縮性変化は、戻らないと言われています。除菌後も、胃がんや胃潰瘍ができていないか、定期的に胃の状態をチェックすることが推奨されます。定期的な検診を行うことで、健康な胃を保つことが大切です。
大腸カメラとポリープについて
大腸は食べ物の最後の通り道で、主に水分と塩分の吸収を行う役割を持つ消化管です。大腸は小腸から続いており、消化された食物の残りかすを処理し、最終的に排泄物として体外に排出します。

大腸カメラは受けたほうがいいのか?
一般的に患者さんが大腸カメラを受けられるきっかけは、便に血が混じる、腹部が張る、便秘や下痢が続くと言った自覚症状、また、検診での便潜血陽性などです。大腸にはさまざまな病気が潜んでいる可能性があり、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、虚血性腸炎、過敏性腸症候群、そして大腸がんなどがあります。大腸がんは日本では近年増加傾向で、2019年における罹患率では男女共に臓器別で2番目に多く、日本人にとって身近ながんとなりました。また、年齢別の罹患数では、40歳から高齢になるにつれて増加し、中高年で発症しやすいがんといえます。40歳以上で一度も大腸カメラを受けられたことがない方は、是非一度検査を受けられることをお勧めします。
当院では、毎年多くの患者様にご来院いただき、大腸カメラを実施しています。毎年コンスタントに2000件近くの検査を実施してまいりました。
大腸カメラに抱くイメージと言えば、「痛いんじゃないか」「怖い」と言った、ネガティブなイメージだと思います。
当院では、ほぼすべての患者さんに鎮静剤を用いて患者さんが眠っている間に検査ができるよう、できる限り苦痛のない検査を心がけています。検査でみつかったポリープに関しては、切除できる病変であれば、その場で切除することも可能です。
大腸ポリープはできる限り取ったほうがいいのか?
大腸カメラで偶然みつかったポリープは、できる限り取ったほうがいいのでしょうか?
実は、大腸がんが発生するパターンはいくつかあると言われているのですが、その中でもっとも代表的なものに、腺腫という良性のポリープががん化して発生するパターン(adenoma-carcinoma sequence)があります。

この腺腫という良性のポリープが大きくなればなるほど、癌化する確率は高くなると言われており、切除すべきと考える大きさの目安は一般的には5mm以上と言われています。将来、どの腺腫が癌化するかの予測は困難です。そのことを考えれば、芽はできる限り摘んでおくほうが得策であるといえます。40歳以上の患者様には是非、無症状でも定期的な大腸カメラ検査を受けられることをお勧めします。
また、大腸がんは、腺腫ががん化するパターン以外にも、正常粘膜から直接に癌が発生するパターンもあり(de novo pathway)、大腸がん発生の主要な経路のひとつと言われています。このパターンで発生する大腸がんの初期像は、わずかな大腸粘膜の変化を示すのみで、自覚症状はほぼ出ないであろうと考えられています。どのがん種にもいえることですが、早期発見と早期治療ががん治療の鍵です。毎年の便潜血検査の実施や、定期的な大腸カメラ検査の実施をご検討ください。
当院では毎年数多くの大腸カメラを実施しており、乳腺・消化器外科専門病院として大腸疾患の治療にも多く携わってまいりました。心配なことや気になることがあれば、お気軽に受診してください。
胃カメラ検査
診察・電話等で予約いただき、当日朝絶食(ただし水分、水、お茶は可)でお越し下さい。胃の精密検査をするためには、胃を空にしなくてはなりません。そのために、次のことをよく守ってください。
※血液を止まりにくくするお薬など内服されている方は一週間前までにお申し出ください。
検査でわかる主な疾患
- 逆流性食道炎
- 食道静脈瘤
- 食道癌
- 胃炎
- 胃ポリープ
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 胃癌
- 十二指腸癌
検査の流れ
検査前日夕食は普通に召し上がってください。
食後の薬は服用してください。
夜9時以後は食べないで、寝るまでは水分のみ取ってください。
検査当日朝絶食(ただし水分、水、お茶は可)でお越し下さい。
(たばこなど吸わないでください。)
朝は、なるべく排便を済ませてお越しください。
検査後胃内視鏡検査が済みましたら、その日のうちにコンピューター画像を示しながら説明します。組織診断は数日後の報告になります。
超音波検査
検査前日準備、検査当日は胃カメラを受けられる方と同じです。
女性の方は、尿がたまっている状態の方が子宮や卵巣などがはっきりとうつります。来院後の排尿はできるだけ我慢してください。
検査でわかる主な疾患
- 乳房:腫瘤の有無や大きさ
- 腹部:胆石症、胆のうポリープ、肝臓の腫瘤など
検査の流れ
検査前日夕食は普通に召し上がってください。
食後の薬は服用してください。
夜9時以後は食べないで、寝るまでは水分のみ取ってください。
検査当日朝絶食(ただし水分、水、お茶は可)でお越し下さい。
(たばこなど吸わないでください。)
朝は、なるべく排便を済ませてお越しください。
大腸内視鏡検査
大腸の検査を受ける前には、下剤を使って前処置をしますが、大腸内に食べ物の残りかすが残っていると、正確な診断ができません。前処置の効果を高めるためには、食物繊維と脂肪の少ない食事を取ることが大切です。
検査でわかる主な疾患
- 大腸憩室
- 大腸ポリープ
- 大腸癌
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 虚血性腸炎
検査の流れ
検査前日
- 昼食・夕食は、消化の良い食事を軽くとってください。
夕食は夜9時までに、食事・内服してください。便秘がちの方は2~3日前から消化の良いものを食べるようにこころがけてください。 - 眠前までに水分はしっかり取りましょう。
(水の飲み方が少ないと下剤が効きませんので、できるだけ飲んでください。) - 眠前にラキソベロン(下剤)を内服してください。
(ラキソベロンをコップ1杯の水に全部入れて飲んでください。)
検査当日
- 朝、絶食でお越しください。血圧の薬を服用中の方は、朝、内服してください。水、お茶は飲んでもかまいません。ただし、腹部超音波検査がある方は、水分もとらないでください。
- 下剤(約2リットル)を飲んでいただきます。
- 便がきれいになった方から鎮静剤を使用して眠っている状態で検査をします。
※鎮静剤を使用しますので、車の運転は絶対にご遠慮ください。
車で来られた方は鎮静剤を使用できません。 - 検査終了後、30分~1時間くらい休んでいただきます。
大腸内視鏡検査結果は、その日のうちにコンピューター画像を示しながら説明します。組織診断は数日後の報告になります。 - 検査終了後、腹部がはった感じがありますが、腸の中に空気を入れたためです。次第におさまりますので心配いりませんが、苦痛が強い場合はお申し出ください。
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※検査時にポリープが発見された場合、同時に切除することができます。 切除すると1~2日の入院が必要となります。
ポリープ切除を希望される方は事前に申し出てください。 -
※ポリープ切除を希望される方は、次のものをご用意ください。
健康保険証・印鑑・洗面道具・着替え(寝衣、下着類)・湯のみ・箸スリッパ・タオル・ティッシュペーパー、常用されている薬 等
ネックレス・指輪等の貴金属類はポリープを切除の際、熱傷等の危険性もありますので、外してお越しください。
貴金属品の紛失・破損した場合でも当院では責任を負えませんのでご協力をお願いします。
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※検査時にポリープが発見された場合、同時に切除することができます。 切除すると1~2日の入院が必要となります。